「声明:安倍晋三元首相の「国葬」に反対する」を発出しました
声明:安倍晋三元首相の「国葬」に反対する
2022年9月15日 東京歴史科学研究会
当会は、安倍晋三元首相の「国葬」を実施しようとする岸田文雄現内閣の閣議決定に反対し、その撤回を求めるものである。同決定は、死の意味づけに国家が介入するものであり、以下の点で断じて承認することはできない。
第一に、特定の個人の葬儀を国家が公的に執り行うことは、日本国憲法が定めた平等原則に反し、思想信条の自由を侵害するものである。戦前の国葬令は廃止され、それに代わる法律は存在しないなかで、17 億円におよぶ膨大な経費を税金から支出することを正当化する法的根拠はない。内閣府設置法に依拠するという政府見解にはあきらかに無理があり、かかるなし崩し的な「国葬」の実施は、自治体・教育現場やメディアでのさらなる弔意の強制を助長し、社会での同調圧力をいっそう強めるであろう。
第二に、そうした形で強要される思想信条そのものの内実が、きわめて危険な点である。当会は創設以来、戦後民主主義を推進する立場から、近代日本の国家主義的な暴力を批判し、侵略行為をめぐる加害責任を一貫して追及してきた。その立場から鑑みるに、天皇制国家による戦争遂行と反民主主義の経験に学ばず、日本国憲法を改悪しようとする反動的な思惑は、安倍晋三元首相の死を利用した「国葬」強行の背景にも看取される。それは、靖国神社をめぐる諸問題や、かつて天皇の「大喪の礼」に際して表面化した自粛ムードなどとも連動し、憲法改悪の新たな地ならしにもなりかねない。また、反社会的な宗教セクト旧統一教会との癒着した関係の実相が未解明なまま、その中心人物を英雄のようにあつかう倒錯した幻想を流布することで、これまでの杜撰な政治運営を誤魔化し、争点をすり替え、国政を改善する契機を社会全体で逸することにつながるであろう。
第三に、安倍晋三政権による一連の政策・不祥事を美化することは決して許されない。戦後民主主義を率先して破壊し、立憲主義を形骸化させ、福祉を切り捨て、格差を助長し、原発問題の隠蔽に注力し、公費を私物化し、公文書を改竄・廃棄し、言論を封殺し、安保法制を強行し、教育の国家主義化に狂奔し、日本軍性奴隷制(いわゆる「従軍慰安婦」)問題を率先して歪曲し隠蔽してきた数々の行いを、私たちは断じて許すことはできない。その死を「国葬」に付すことは、国際的にもその政策を肯定するだけでなく、近隣諸国・諸地域の住民の感情を逆なですることにしかならないだろう。
以上の理由で、当会は安倍晋三元首相の「国葬」実施に反対し、現内閣がその閣議決定
を撤回することを要望する。
以上


