声明「高市早苗首相による「台湾有事発言」の即時撤回を求めるとともに安保法制の廃止を訴える」を発出いたしました。
声明「高市早苗首相による「台湾有事発言」の即時撤回を求めるとともに安保法制の廃止を訴える」
2025年11月7日、衆議院予算委員会にて高市早苗首相は、中国政府が台湾へ武力をもって侵攻した場合、2015年に成立した安保法制における「存立危機事態」に該当するという主旨の発言をした。しかしながら、この発言は日本社会に様々な悪影響を生じさせるだけでなく、戦後日本社会が維持してきた非戦と平和主義の存続を危うくさせるものであり、断固として容認することはできない。
「存立危機事態」とは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律)と定義される。2015年に国会で審議された「安保法制」によって、「存立危機事態」は集団的自衛権行使の要件の一つとなっている。つまり、日本が「存立危機事態」に陥ったと政府が判断すれば、自衛隊は他国に対して武力を行使できるのである。
しかし、そもそも「集団的自衛権の行使」容認は、日本国憲法に定める戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認といった理念と大いに抵触する可能性がある。それにもかかわらず、「集団的自衛権の行使」は、2014年に安倍内閣による閣議決定という形で「容認」されたものであり、国民の合意が得られているとはいえない。また、「存立危機事態」における武力行使を根拠づけるために2015年に制定されたいわゆる「安保法制」も、国民や野党議員らの反対の声を無視した強行採決により成立したものである。民主主義の理念を蔑ろにする形で成立したこれらは、即刻廃止とするべきものである。東京歴史科学研究会は2015年4月25日に「安倍政権の歴史認識を批判し安保法制整備に反対する決議」は発出している。成立から10年が経過したとはいえ、時間の経過とともにこの問題を蔑ろにしてはならない。
その後、歴代の内閣は「存立危機事態」の内実について、「いかなる事態が存立危機事態に該当するかは、個別具体的な状況に即し情報を総合して判断することとなるため、一概に述べることは困難」(2024年22月22日参院本会議における岸田文雄首相の発言)等と答弁してきた。しかし、今次の高市首相による発言は、中国による台湾への軍事侵攻が「存立危機事態」に該当することを明言しており、中国政府からの大きな反発を招く事態となった。この影響は国家間の政治外交に留まらず、中国政府により渡航自粛要請や、輸出入の規制、文化的交流の減退などの形で国民の生活に数多くの悪影響を及ぼしている。とりわけ、学ぶ意欲を持ちながら留学の機会を奪われた学生諸氏への影響は計り知れない。
東京歴史科学研究会は、このような悪影響を及ぼす高市首相による「台湾有事発言」の即時撤回を求める。また、この問題の根本原因ともいえる「集団的自衛権の行使」容認の撤回及び、「安保法制」の廃止を今一度強く要求する。
2026年1月30日
東京歴史科学研究会

