「【声明】「国立大学法人法の一部を改正する法律」に断固反対する」を発出しました

【声明】「国立大学法人法の一部を改正する法律」に断固反対する

 2023年10月31日、岸田内閣は、「国立大学法人法の一部を改正する法律」案を閣議決定し、事業規模の大きい国立大学法人(特定国立大学法人)に、その運営方針を決定する合議体(「運営方針会議」。以下「会議」)の設置を義務づける方針を明らかにした*。会議は、学外の有識者を想定する3人以上の運営方針委員と学長から構成され、大学の中期計画や予算・決算を決議するものとされているが、決議内容に基づく運営がなされていない場合に、会議は学長に改善措置を要求することが可能であると規定されている。また、学長の選考に関する事項についても、会議は、学長選考・監察会議に対し、意見を述べることができると明記されている。本改正案は、12月13日の参議院本会議において賛成多数で可決、成立しており、2024年10月に施行される見込みとなっている。これを承けて、私たち東京歴史科学研究会は、以下に述べる二つの懸念から、この「国立大学法人法の一部を改正する法律」(以下「改正法」)に断固反対する。

 第一に、国によって大学の自治が徹底的に破壊し尽くされることをまずは懸念しなくてはならない。2004年の国立大学の独立行政法人化に始まる、いわゆる大学「ガバナンス」改革において、国は、①学長選考における教職員投票の廃止、②学外委員の参入になる学長選考会議による学長選出、③教授会の学長の諮問機関化などの諸改革を推進してきた。要するに、これは、大学の自治において重要となる教職員の権利を否定する施策と言えるが、今般の改正法において、国はその方向性をさらに推し進めるに至った。すなわち、これまで役員会と学長が担ってきた権限(予算・決算、大学の中期計画等の決議)を新たに会議に付与すること、会議を構成する運営方針委員の任命にあたっては、文科相の承認を必要とすることを改正法は表明したのであるが、これは、国立大学の管理運営を行政権力の一手に委ね、もって、大学の自主・自律を否定する挙であると言わざるを得ない。

 第二に、上に述べたことの帰結として、学問研究の自由が大きく制限される事態を懸念しなくてはならない。先述した通り、今般の改正法は、学外の有識者らからなる運営方針委員の任命に際して、文科相の承認が必要となることを表明している。しかし、そのようなことがまかり通るならば、今後、運営方針委員の人選、および大学の運営方針が、政権の意向に大きく左右されることは必定である。そして、それは、大学における学問研究が、行政権力の支配下に置かれることをただちに意味する。昨今の日本政府は、国際卓越研究大学制度を通じて、「稼げる」研究分野に資金を集中投下(「選択と集中」)するとともに、多額の軍事研究予算を―2022年閣議決定された「安保3文書」の内容と連動する形で―計上する方針をとってきた。今般の改正法によって、そうした傾向に拍車がかかるならば、国の新自由主義路線・軍国主義路線に迎合した研究がますます推奨される一方、それに適合しない―人文・社会科学諸領域を筆頭とする―学問分野が国立大学から淘汰されてゆくことは必至であろう。まさしく、国による学問研究の自由の侵害が懸念される事態であると言わねばなるまい。

 以上に述べた通り、改正法は、いずれをとっても、日本国憲法が保障する学問の自由に真っ向から違背する暴挙というほかなく、断じて許容されるものではない。私たち東京歴史科学研究会は、国家機関が負うべき憲法尊重擁護義務の原則に照らして、今般の改正法が廃止されることを、ここに強く求めるものである。

                                                                                    2023年12月16日

                                                                                   東京歴史科学研究会

*:文部科学省 “国立大学法人法の一部を改正する法律案”〈 https://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/mext_00052.html〉.文部科学省.参照2023年12月10日

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